ブログ
2015/11/20
コラム
痛みによく使われるお薬について
腰痛や坐骨神経痛で病院に行くと、たいていは痛み止めのお薬を処方されます。
患者さんに「どんなお薬をいただいていましたか?」と聞くと、
すぐに薬の名前の言える方はほとんどおられません。
慢性痛で長い間服用されていれば別ですが、どんな種類の痛み止め薬なのかわからないまま服用されている方も案外多いのです。
もちろん、薬剤師さんから処方の解説書をもらっているはずですね。
でもたぶんあまり読まれてなかったり、効能も記憶に残っていないのかも知れませんね。
そこで、今日は痛みの種類とそれに応じたお薬をまとめてみようと思います。
抗炎症薬
身体の組織に障害を受けると、痛みを引き起こす物質が生成されます。
プロスタグランジン類といわれる発痛を強める物質です。
これが、いわゆる炎症が起こった状態です。
炎症自体は、身体が組織を修復しようとする反応ですので、本来悪いものではありません。
ただ、その際に痛みを生じるので、この発痛物質を抑えて炎症を鎮める薬が、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)といわれるものです。
このお薬が有効なのは、急性の痛みで炎症が起こっている状態です。
慢性の痛みでは、炎症が存在しないことも多いので、飲んでも効かないことになります。
薬剤の配合や働きなどの違いで種類はたくさんありますね。
よく処方される商品名としては、
アスピリン ボルタレン ロキソニン モービック
などがあります。
また、抗炎症薬にはステロイド性のものもあります。
ステロイド剤は、副腎皮質ホルモンと同じ作用のある物質を人工的に作ったものです。
ステロイド剤は、強力に炎症を抑える作用があるので、痛風などの強烈な痛みやがんの痛み、関節リウマチなどの痛みに用いられています。
ただし、さまざまな副作用もあるので注意が必要です。
オピオイド系鎮痛薬
むずかしそうな名前ですが、わかりやすく言うとアヘンやモルヒネなどの麻薬の一種です。
鎮痛作用は非常に強力です。
脳を中心とした全身のオピオイド受容体に結合して痛みを抑えます。
ただし、これも悪心・嘔吐・便秘などの副作用もあります。
よく使われているのがトラマールで、弱オピオイド鎮痛薬です。
トラマールに解熱鎮痛薬を掛け合わせたトラムセットもよく使われています。
抗うつ薬
慢性的な痛みを訴える方に、抗うつ剤が処方されることもよくあります。
もともと、抗うつ薬はセロトニンやノルアドレナリンといった、脳内で分泌される物質を再取り込みされないようにする薬です。
ところが、セロトニンやノルアドレナリンには鎮痛作用があることがわかって以来、痛み止めとして使われるようになりました。
もちろん副作用もあるので、鎮痛作用は劣るけれど副作用の少ないSSRIやSNRIといったのが使用されています。
パキシル ルボックス ブロザック サインバルタなどがあります。
神経障害性疼痛治療薬
神経が圧迫されたりウイルスによって障害されたりすると、神経が傷つくことで痛みが起こります。
痛みが起きている状態では、カルシウムチャネルを通じてカルシウムが神経細胞内に入ってきます。
この時に、神経伝達物質が過剰に放出されると同時に、痛みを引き起こす物質も出るため結果として痛みが起こります。
このカルシウムが入ってこないようにするのがこの薬の作用です。
リリカが有名ですね。
炎症ではなく、神経の興奮を抑えて鎮痛するのが目的の薬です。
下行性疼痛抑制系神経の活性化
脳の神経には痛みを抑えようとする下行性疼痛抑制系という神経があります。
このはたらきを活性化させる作用のある薬があり、ノイロトロピンといいます。
その有効成分は、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液と呼ばれます。
ウサギの皮膚にワクシニアウイルスを投与した時にできる、炎症部位から抽出した物質がノイロトロピンです。
炎症には効きませんが、副作用が少ないのでさまざまの痛みに使われています。
薬の効かない痛みなら
ざっと見てみても、痛みの種類によって効果のある薬が違うのがわかりますね。
あなたの腰痛や坐骨神経痛が、どんな種類の痛みなのかを調べることは大切です。
そして、薬で良くなるならそれもいいでしょう。
でも、いろんな鎮痛薬を使っても効果がない場合は、別の原因を考えてみる必要があります。
その中でも、筋肉や筋膜に生じたトリガーポイントが痛みの原因のことも少なくありません。
慢性の痛みで困っておられるなら、筋肉を一度調べてみることをおすすめします。